任せると仕事が思い通りに進まないときに|仕事でズレる任せ方の違い⁠

「任せるね」と言われた仕事でのズレを表したアイキャッチ。指示する人と困っている人の間に認識の違いがある様子を表現したデザイン コンビニの仕事
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「これ、任せるね」

そう言って部下やスタッフに仕事を渡したとき、自分の中では「1から10までしっかり任せたつもり」でした。それなのに、気づいたときには想定していたものとは全く違う形で進んでいて、結局あとから自分が手直しすることになり、余計に時間がかかってしまった……。そんな経験はありませんか?

目的も伝えているし、やり方の基本も見せている。途中で余計な手を出さないのも、本人の成長を思ってのこと。それなのに、なぜか思い通りに進まない。

実は「任せる」という言葉は、思っている以上に曖昧で、お互いの認識がズレやすい言葉の一つです。

今回は、現場で実際に起きたズレや私の失敗談をもとに、単なる「丸投げ」や「過干渉」にならないための、本当の意味での部下への仕事の任せ方について考えていきます。

 「任せる」が「丸投げ」になってしまう原因

この「任せたはずなのに、なぜか上手く進まない」というズレの原因を考えていたとき、私がまだ店長ではなかった頃の出来事を思い出しました。

当時、店長から「ここ任せるね」とよく言われていたのですが、今振り返るとそれは最初から最後までを任されていたわけではありませんでした。

ある程度まではその人がやって、最後の仕上げの部分だけを渡される。いわば、10のうちの「最後の10だけ」を渡されている状態だったのです。

それなのに、後から「前に教えただろ」と言われても、1から10までの全体の流れを知らない状態では、仕事の本質を理解することはできません。任せられたつもりでも、実際には「部分的に渡されただけ」でした。

店長という立場になった今だからこそ分かりますが、全体の流れを共有しないまま結果だけを求めるのは、仕事を任せているのではなく、単に「都合よく一部を丸投げしているだけ」になってしまいます。

任せた後の「途中の口出し」がスタッフを迷わせる

仕事の全体像が見えないまま任されることほど、作業する側にとって困るものはありません。どこまで自分の判断で進めていいのか、その境界線が見えないからです。

手探りのまま進めるしかなく、スタッフは常に不安を抱えることになります。

さらに、任せると言ったにもかかわらず、途中でつい口を出したり、手を出したりしてしまう過干渉もズレを大きくする原因になります。

店長側としては「良かれと思っての手助け」であっても、言われた側からすれば、結局最後まで任せてもらえなかったという不信感に繋がってしまいます。

そして、手探りで一生懸命に仕上げた後に「これじゃない、違う」と自分のやり方を否定されてしまうのが、スタッフにとって最もモチベーションを削がれる瞬間です

「任せる」というのは、ただ作業を相手に投げることではありません。手を出したくなるのを堪え、「最後まで任せきる覚悟」を持たなければ、本当の意味でスタッフが育つことはありません。

言葉のズレについては、こちらでも書いています。

POP作成の失敗で気づいた、指示とアウトプットのズレ

任せ方によって結果が大きく変わると、身をもって実感した出来事がありました。夏の時期に、ラムネと塩分チャージのPOP作成を同僚に任せたときのことです。

いつも私の作り方を見ているから大丈夫だろうと思い、「ここは任せるね」とだけ伝えて渡しました。しかし、出来上がったPOPを見ると、なぜか「暑いという文字が一番大きく、目立つ色で書かれていたのです。

本来、そのPOPで一番伝えたかった主役は「塩分と水分チャージ」です。「暑い」というのは、あくまでそれを伝えるための背景(前提)に過ぎません。

気になって本人に「どこが一番大事だと思った?」と確認してみると、ちゃんと「塩分と水分チャージです」という答えが返ってきました。

つまり、頭ではちゃんと本質を理解しているのに、いざ形にする際のアウトプットの優先順位がズレていたのです。このとき、言葉をただ投げただけでは、「意図や細かいニュアンスまでは伝わらない」ということに気づかされました。

店長とスタッフの間でこうした「指示のズレ」がなぜ起きてしまうのか、その原因についてはこちらの記事で詳しく書いています。

段階を踏んで「任せられる状態」を一緒に育てる

このPOPの苦い経験から、私はスタッフへの任せ方を変えることにしました。いきなりすべてを委ねるのではなく、まずは1から10までの全体の流れを丁寧に言葉で説明するようにしています。

その上で、最初は簡単なステップから少しずつ任せていく。最終的に一人の判断でできるようになってもらうこと。それこそが、本当の意味での「任せる」ということです。

また、任せた後に自分側の意図と違う仕上がりになっていたとしても、黙って勝手に修正することはしません。

どこがズレてしまったのかを一緒に直すか、時間がなければ「ここをこう直していい?」と必ず本人に確認を入れるようにしています。ただ作業を相手に丸投げするのではなく、段階を踏んで「任せられる状態を一緒に育てていくこと」が店長の役割です。

この感覚は、どこか自転車の練習に似ています。

最初から一人で乗れる人はいません。後ろを支えながら、本人の様子を見て、少しずつ手を離していく。任せるという言葉の本当の意味は、その「少しずつ手を離していく過程そのもの」を指すのだと思います。

まとめ

「任せる」という言葉は、思っている以上に曖昧で現場でとてもズレやすい言葉です。

店長側は任せたつもりでも、スタッフには部分的な丸投げに感じられていたり、途中で手を出されて「最後まで任せてもらえなかった」と不満に繋がっていたりすることもあります。

同じ「任せる」でも、お互いの見ている景色が違えば、仕事の結果は大きくズレてしまいます。

だからこそ、任せるというのはただ業務を渡すことではなく、相手の「できること」を少しずつ増やしながら、根気強く手を離していく変化のプロセスそのものです。

スタッフとの信頼関係の中で、この「任せるプロセス」を一つずつ丁寧に形にしていきたいものです。